ゲームを遊び終えたあと、なぜか、音だけが残っていることがあります。
物語の細部は少しずつ薄れていくのに、あのとき流れていた旋律だけは、ふとした瞬間に思い出せる。
静かな曲も、感情を揺さぶる激しい曲も、そのどちらもが、記憶の中に残り続けているのかもしれません。
音楽は、ただ雰囲気を彩るものではなく、そのとき感じた感情や記憶と結びつき、ゲーム体験そのものをかたちづくる存在でもあります。
今回は、そんな“音が心に残る”インディーゲームを3本ご紹介します。
物語とともに残る音、口ずさみたくなる旋律、そして静かな曲と激しい曲、その振れ幅ごと記憶に残る音。
それぞれ異なるかたちで、心に残り続ける作品たちです。
音とともに、物語が残っていく――『ルミネックス カルテット』
ゲームを遊び終えたあと、物語よりも先に、音だけが残っていることがあります。
『ルミネックス カルテット』は、ゲーム音楽作曲家・宇城和孝氏が手がけた、音楽を軸にしたRPGです。
プレイしていると、その設計が自然と伝わってきます。
フィールドを歩くときも、戦闘に入った瞬間も、まず耳が反応し、その音がそっと心に触れてきます。
レトロRPGらしい手触りの中で、音楽がプレイのリズムそのものを形づくっているようでした。
サウンドはひとつひとつの音がクリアで、輪郭がはっきりしています。
低音は静かに支え、高音はやわらかく伸びる。
ただ流れるのではなく、しっかりと“残る音”です。
印象的だったのは、塔で流れる「Highrise Harmony」。
軽やかな旋律の奥に、わずかな寂しさが混じっていて、この世界の空気そのもののように感じられました。
そして本作では、ときおり音がすっと消え、静寂が訪れます。
そのあとに続く一音が、やけに深く心に響く。
音楽だけでなく、“間”までもが体験の一部になっていました。
遊び終えたあと、ふとした瞬間に思い出すのは、あの旋律だったように思います。
※本作は2026年4月23日発売予定のタイトルです。
©Kazutaka Ushiro ©Gotcha Gotcha Games Inc./YOJI OJIMA 2020 ©REFMAP
気づけば口ずさんでいる旋律――『リンカネーション・ジャーニー』
あの頃を思い出させるドットの世界。
けれど、その記憶を呼び起こしているのは、画面だけではありません。
『リンカネーション・ジャーニー』で強く印象に残ったのは、8ビットで紡がれる音でした。
ファミコンを思わせるチップチューン。
どこか懐かしいのに、ただの再現では終わらない。
場面ごとに、空気や感情までそっと運んでくるような響きがあります。
バトルでは鼓動を速めるような疾走感があり、神殿では静かに空気を引き締め、フィールドでは、これから何かが始まる予感をやさしく広げてくれる。
音が、少し先の気配を教えてくれるようでした。
作曲を手がけたのは、朱音あおも氏。
ゲームミュージックに精通したその感性が、
「懐かしさ」と「いまの聴き心地」を自然に結びつけています。
印象的だったのは、曲名が表示される演出です。
いま流れている音に、名前が与えられることで、その瞬間がひとつの“記憶”として残りやすくなっているように感じました。
とくに「こうようたるシンフォニア」。
強敵との戦いで流れるこの曲は、緊張感と高揚感が重なり、気づけば音に引っ張られるように戦っていました。
ゲームを終えたあと、ふとした瞬間に口ずさんでしまう。
そんな音がある作品は、やっぱり少し特別です。
© 2025 MSBgamedev All Rights Reserved.
静と動が響き合う音――『Million Depth』
『Million Depth』で心に残ったのは、静かな曲と激しい曲、その両方がしっかりと息づいていることでした。
地底へと落ちていくこの作品では、ピクセルで描かれた光景がとても繊細です。
その世界に重なる「katto」氏のサウンドもまた、ただ一色ではありません。
落ち着いた楽曲は、地底世界の儚さや孤独を静かに映し出し、一方で感情が大きく動く場面では、音楽もまた強く脈打ちます。
とくに印象的だったのは、イベントシーン。
やわらかく寄り添うような曲が流れることで、儚い一枚絵やモマの小さな感情の揺れが、より深く胸に届いてきました。
本作の静かな曲には、世界の空気そのものを伝えるような繊細さがあります。
その一方で、本作には主題歌として、「凛々咲」氏による歌声が用意されています。
この楽曲は、通常のプレイ中に繰り返し耳にするものではなく、物語の深い部分に触れた先で出会う、特別な一曲。
だからこそ、その歌声はそれまでの体験とは少し異なるかたちで、強く印象に残ります。
様々な楽曲によって積み重ねられてきた感情が、最後にあふれ出すような感覚がありました。
『Million Depth』の音楽が印象に残るのは、落ち着いた曲だけでも、激しい曲だけでもないからだと思います。
静かな楽曲で世界を描き、動きのある楽曲で感情を揺らす。
その振れ幅が、この作品ならではの響きを生んでいました。
遊び終えたあとに残るのは、どちらか一つではなく、そのコントラストごと含めた音の記憶です。
それが『Million Depth』を、少し特別な作品にしているように思います。
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記憶の中に残る、あの音
ゲームを遊び終えたあと、ふとした瞬間に思い出すものがあります。
それは、物語の結末かもしれないし、キャラクターの言葉かもしれません。
けれど、ときには音だけが、静かに残り続けることもあります。
今回ご紹介した3作品は、それぞれ異なるかたちで、音と記憶を結びつけてくれるゲームたちでした。
物語とともに残る音。
気づけば口ずさんでいる旋律。
そして、静かな曲と激しい曲、その振れ幅ごと心に残る音。
落ち着いた音に包まれる時間もあれば、感情を大きく揺さぶられる瞬間もある。
その“静と動”の重なりが、ゲーム体験をより深く、印象的なものにしてくれます。
もし、いまも心に残っているゲームの音があって、
さらに、これから新しく心に残る一本に出会いたいと思っているなら。
そのひとつが、この中にあればうれしいです。

ライター/ねりけし
ピクセルアート(ドット絵)ゲームプレイ歴20年以上。
Vtuberの下で2年間、動画作成とプロモーションを学ぶ。
最近インディーゲームの魅力に気付いて沼にハマる。

