2026年1月31日

『Million Depth』プレイレポート|地底を堕ちる“思考型アクション”と薄明のピクセルアート

愛らしくも、天使のような清廉さを感じさせるキャラクター。
ピクセルで紡がれた地底の光景は、炯然(けいぜん)と輝き、
静けさの中で響くサウンドが、その世界に息づく鼓動を伝えてくれます。
独創的なバトルシステムは、“考える喜び”をそっと教えてくれる。
どの要素が際立つのかと問われても、答えはひとつ――「すべて」
『Million Depth』は、静寂の中で創造がきらめく、インディーゲームのひとつの到達点です。


そんな本作『Million Depth』は、
“深層墜下アクションストラテジー”と呼ばれる、独自のジャンルに属する作品です。
プレイヤーは地底へと落下しながら、世界の理(ことわり)に干渉し、そして戦います。
自らが止まるたびに、世界もまた静止する――。
そんな不思議なリズムの中で、戦いと探索を繰り返していくのです。

ライター/ねりけし

目次
『Million Depth』の基本情報と開発者について
焼き尽くされた地球と、地下に残された希望——『Million Depth』の物語
『Million Depth』のゲームシステム
プレイの果てに見えたもの——『Million Depth』感想と小さな総評

『Million Depth』の基本情報と開発者について


タイトル名:『Million Depth』
開発/販売:開発/Cyber Space Biotope、パブリッシャー/PLAYISM
発売日:2025年11月12日
ジャンル:深層墜下アクションストラテジー
プラットフォーム:PC(Steam)
対応言語:日本語・英語・中国語(簡体字)・中国語(繁体字)
価格:未定

本作は、時間や思考といった抽象的な概念を“ゲームとして体験させる”ことに成功した、稀有な作品です。
ピクセルアートで描かれる静寂の地底世界は、凛とした美しさを感じるほどに繊細。
独自のテンポで進む戦略的アクションと見事に調和しています。
その融合が、『Million Depth』ならではの深い没入感を生み出しています。

開発を手がけるのは、ゲームクリエイター「αPop」氏が代表を務めるゲーム開発サークル「Cyber Space Biotope」。
「αPop」氏は、複数のゲームコンテストで受賞歴を持つ実力派であり、
繊細なビジュアル表現と緻密なゲーム設計を両立させています。
音楽は「katto」氏、主題歌はシンガーソングライター「凛々咲」氏が担当し、
作品全体に儚くも美しい世界観を添えています。

パブリッシングは、国内外の優れたインディー作品を数多く手がける「PLAYISM」
2023年の発表からおよそ2年半の開発期間を経て、ついにリリースを迎えました。

焼き尽くされた地球と、地下に残された希望——『Million Depth』の物語


フレアによって地上を焼き尽くされた地球。
その灼熱の災厄により、地表はもはや人が住める場所ではなくなってしまいました。
人類は二つの道を選ぶしかありませんでした――地下へ潜るか、宇宙へ逃れるか。

しかし、宇宙へ行けるのは「チケット」を手に入れたごく一部の人々のみ。
残された多くの人類は、地下深くへと逃げ込むしかありませんでした。

彼らがたどり着いたのは、「ミリオンデプス」と呼ばれる巨大な縦穴。
その深さは地底100万階層に及ぶといわれ、
見下ろした先には、漆黒の闇――まさに“常闇”の情景が広がっています。

生き延びるため、人類は探索隊を送り込み、少しずつ地底の世界を切り開いていきました。
プレイヤーの分身となるのは、宇宙船から地球を見つめていた少女「モマ」。
彼女は、宇宙に避難した人類の末裔です。

モマには、地球の地下を調査する友人「キミ」がいました。
時折届く彼からのメッセージは、荒廃した世界でのモマの唯一の支え。
しかしある日を境に、メッセージが届かなくなりました。

大切な「キミ」に何かが起きたのではないか。

そう感じたモマは、彼を追って地球へ降下し、
そして“ミリオンデプス”の底へ――自ら堕ちていく決意を固めるのです。

『Million Depth』のゲームシステム


1.探索:落下と選択のサイクル

『Million Depth』の探索は、地底へと“落ちていく”ことから始まります。
「ただ落ち続ければいいのでは?」――そう思うかもしれません。
しかし、長い距離を一気に落下すると酸欠状態になってしまうため、
こまめに足場へと降りていくことが探索の基本となります。

各階層では、サーチによって3つのルートが提示され、
プレイヤーはその中から降下先を選択します。

敵が潜む戦闘エリア、休息によってHPを回復できる休憩所、
発電機によるバッテリー補給、宝箱やイベント、
さらには武器クラフトが行えるファクトリーなど――その内容は毎回異なります。

危険を避けたいときは、酸素ボンベを消費してエリアそのものをスキップすることも可能です。
ただし、戦いを避けるほどに、得られる資源は少なくなっていきます。
一度の選択が、生死を分ける――そう言っても過言ではありません。


2. 維持:生き延びるためのリソース管理

新たな階層に降り立つごとに、“バッテリー”が消費されます。
さらに戦闘中でもエネルギーを使うため、常に残量を意識しなければなりません。
発電機エリアでの回復や、消費アイテムによる補給など、限られた手段で”命綱”を維持していくことになります。

当然ながら、戦闘では敵の攻撃を受ければHPが減少し、
道中で発生する嵐に巻き込まれてもダメージを受けます。
休憩所や回復アイテム(キノコ)をうまく活用しながら、少しずつ深層を目指していきます。

探索の途中では“ショップ”に遭遇することもあります。

通常の取引所だけでなく、特殊なアイテムを扱うキャラクターも存在し、
取引は主に物々交換で行われます。
敵を倒すことで得られる“ジャンクパーツ”は、事実上の通貨として機能しており、
経済が崩壊した世界で生きる人々の、かすかな“理”を感じさせます。

さらに、価値が変動する“キャブ”という資源も存在します。
その価格は常に揺らぎ、 かつての文明が残した“取引の記憶”を感じることできます。


3.戦闘:静止と決断のバトルシステム

本作の戦闘は、物語にも深く関わる装置「ビオトープジャマー」を用いて行われます。
これは主人公モマが開発した技術で、周囲の電気的活動を停止させることができる装置です。
人体に影響がない範囲で、人間の生体活動までも一時的に止めることができる――
つまり“時間を止める”ことが可能なのです。

「ビオトープジャマー」を発動すると、敵の動きもすべて静止します。
ただし、モマ自身が動いた瞬間、その効果は解除されてしまいます。
モマ(プレイヤー)が止まれば敵も止まり、動けば敵も動く――
このシンプルな原理によって、独特の緊張感が生まれています。

敵の挙動も攻撃手段(遠隔攻撃を含む)も完全に停止するため、
反射神経に頼る要素は少なく、思考と判断が勝敗を左右します。
一度立ち止まり、敵の動きを観察し、次の一手を考える。
その“間”こそが、戦いの本質なのです。

本作の戦闘を表す言葉として、配信時に開発者「αPop」氏が「セミリアルタイムバトル」という表現を用いていました。
こちらは配信者・フェイ氏のYouTubeチャンネル出演時の発言によるものです。
配信アーカイブはこちら

もともとはゲームメディアの記事で使われた言葉ですが、その言葉がまさに本作にふさわしいと感じたといいます。リアルタイムとターン制の狭間にある、
“動けば進む、止まれば考える”――その絶妙なバランスが本作を特別なものにしています。

モマの攻撃手段は、近接攻撃である体当たりと、遠隔操作による武器攻撃の2種類。
体当たりは最後の手段としての性格が強く、基本的には遠隔武器による攻撃が主軸となります。
ただし、武器を操作している間は「ビオトープジャマー」の効果が切れるため、敵の攻撃を受けるリスクも伴います。

戦うとは、動くこと。
動くとは、危険を招くこと。
だからこそ、本作の戦闘には“静けさの緊張”があるのです。

次は、この戦いを支える重要な要素――
武器のクラフトとレリックシステムについて紹介していきます。


 4.成長:レリックとクラフトの戦略性

本作のクラフトシステムでは、さまざまなパーツを組み合わせて武器を創り出します。
その感覚は、まるで子どものころに夢中で遊んだブロック遊びのよう。
モマの周囲に浮かぶ、天使の輪のような装置にパーツを装着し、自在に操っていきます。

パーツの種類は非常に多彩です。
銅・銀・金などの基本ブロックパーツ、攻撃力を上げるトゲのようなパーツ、
さらには爆発効果を持つ特殊パーツまで、構成次第で武器の性質はまったく変わります。
基本原則としては、凹凸をつければ攻撃力が上がり、四角く固めれば耐久力が上がる

設計図通りにパーツを組み合わせると“アップグレードパーツ”へと変化し、
その効果は通常の組み合わせよりも高くなります。
このクラフトシステムこそが、本作の“熱中度”を支える重要な要素といえるでしょう。

自由度の高さとパーツの種類の多さは圧倒的で、
ここではすべてを語り尽くすことはできません。
ぜひ実際に触れて、自分だけの武装を作り上げてほしいと思います。

そしてもう一つ、プレイヤーの戦略を大きく左右するのが“レリック”システムです。

ローグライク作品でおなじみの“3つの候補から1つを選ぶ”形式で、
レリックには通常・レア・エピックの3段階のレアリティがあります。
エピックは非常にユニークな効果を持っていますが、必ずデメリットと表裏一体になっており、
リスクを承知で選ぶ勇気が求められます。
レリックは、強敵を倒したり、イベントエリアを攻略することで入手可能。

手に入れたレリックに合わせて武装をクラフトする――
そんな“組み合わせの妙”こそが、本作『Million Depth』の真骨頂。
戦うたびに、落ちるたびに、自分だけの戦略が生まれていきます。

なお、本作には“恩寵値”など、他にも多くの要素が存在しますが、
それはぜひ、あなた自身の目で確かめてみてくださいね。

プレイの果てに見えたもの——『Million Depth』感想と小さな総評


月明りのような繊細な色使い、緻密に計算されたピクセルの組み合わせ。
本作の世界は、儚く、繊細に、そして美しく表現されていました。
単純に“きれい”なだけではなく、どこか儚さを帯びたアートは、効果的な場面で、効果的な手法とともに、私の心を強く釘付けにしました。

イベントシーンは、ピクセルアートで描かれた一枚絵を使用することが多いのですが、
そのままでも心を動かすダイナミックな構図に、ズームやパンといった演出、
そして「katto」氏による儚いサウンドが合わさることで、まるで映画のようなシネマトグラフィを感じさせます。
それは、ただのイベントカットではなく、ひとつのアートに昇華されていると感じました。

白を基調とした少女。その蒼い瞳にぼうっと映りこむ淡いコンピューターの光。
思わず息を飲むほどの美しさを感じました。

登場するキャラクターの数は多くありませんが、ひとりひとりの個性や物語での印象が強く、心に残り続けるキャラクターばかりです。
特に主人公モマのビジュアルは素晴らしく、純白の見た目とかわいらしい性格はまるで天使を思わせます。
荒廃した世界で少し悲しい物語が続く中、会話シーンで彼女が動くたびに、
心がじんわりと温かくなり、癒しのような安らぎを感じました。

だからこそ、彼女が堕ちていく様を見たとき、
靉靆(あいたい)たる哀しみが胸の中を静かに塗りつぶしていきます。

本作の物語は、三つの世界線――α、β、γで構成されています。

プレイを進めていくことで遊べる世界が増えていき、
それぞれの世界で大きく異なる物語が展開され、結末もさまざまです。
やがてそれぞれの世界が互いに干渉し、少しずつ色を変えていく。
その変化に心を癒されたり、悲しみを覚えたり、感情を大きく揺さぶられました。

どの世界も、儚く、美しく、そして残酷。
その結末が明るいとは限りません。

けれど、どこかに霽月(せいげつ)のように美しく輝くものが必ずある――。
そう信じて、私はこの深淵を見届けました。

本作は、ビジュアル面で特に特徴的で、注目を集めやすい作品だと思います。
可愛らしいモマの姿に惹かれて興味を持った方も多いのではないでしょうか。
そんな方が気になるのは、「システムが難しくないか」という点かもしれません。

独創的な「ビオトープジャマー」と「クラフトシステム」。
これまでにない要素の組み合わせに、最初は戸惑うかもしれませんが――安心してください。
私自身、アクションゲームが得意な方ではありませんが、しっかり最後までプレイできました。
一見難しそうに見えるシステムも、実際に触れてみるとその遊びやすさに驚くはずです。
特に、「反射神経を要求されない」という点が大きいと感じました。
落ち着いて考えながら戦えるバトルは、ゲームが苦手な方でも十分に楽しめると思います。

また、クラフトシステムもできることは多いですが、実際の操作はブロック遊びのように直感的です。
構えず手を動かしてみれば、いつの間にか夢中になっていることでしょう。

このように、ゲーム初心者にも優しい設計でありながら、
やり込みたいプレイヤーにとっても“ミリオンデプス”の名にふさわしい深さがあります。
周回を重ねてもアンロックされていないアイテムが見つかり、
クラフトの組み合わせはまさに無限大。
何度遊んでも飽きがこないゲーム性に仕上がっています。
さらに嬉しいことに、ストーリーや演出をスキップできる機能もあり、
繰り返しのプレイに集中することも可能です。
難易度も三段階から選べるので、自分のペースで楽しめます。

冒頭でも触れましたが――
魅力的なキャラクター、緻密で美しいピクセルアート、独創的なゲームシステム、
そして、「katto」氏の繊細な音楽と「凛々咲」氏の歌声が彩るサウンドデザイン。
これらすべてが高い完成度で調和した本作は、まさにインディーゲームのひとつの到達点だと感じました。

ゲーマーなら、ぜひ一度この深淵に触れてみてください。
――そして、彼女の結末を見届けてあげてほしい。

© Cyber Space Biotope. All Rights Reserved. Licensed to and published by Active Gaming Media Inc.

※本記事で使用している画像は、PLAYISMより提供された公式素材および筆者のプレイ映像を使用しています。
※本作のプレイには、PLAYISMより提供されたキーを使用しています。

ライター/ねりけし
ピクセルアート(ドット絵)ゲームプレイ歴20年以上。
Vtuberの下で2年間、動画作成とプロモーションを学ぶ。
最近インディーゲームの魅力に気付いて沼にハマる。

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